聖バーフ大聖堂・神秘の子羊(Het Lam Gods)
しつこすぎですが、まだツール旅行記(苦笑)。
週末に美術史の本を読んでいて、昨夏に観たファン・アイク兄弟の「神秘の子羊」という祭壇画がいかに評価された作品で、いかにいわくつきの歴史を潜り抜けてきたかを知った*1。焼き打ちを逃れ、一部は裸がだめだからととりはずされ、ナポレオンやナチスに持ち去られて*2は戻り、塩坑に隠され、爆破を危ういところで免れ、いまでも一部は盗難されたままみつかっていないパネルがあるらしい(そこは現在複製)。そのせいか、もうこの祭壇画はゲントの聖バーフ大聖堂から一切外には出さないことになっているらしい。
- この大聖堂の真向かいのホテルに泊まったのは偶然(時々予約漏れが発生するらしいbooking.comで直前でも予算の範囲内で予約できたホテルがそこだった)夜中窓の外をみるとぼーっとステンドグラスごしに内部がほのぐらく光る大聖堂があまりに近くにありすぎて、怖かった(写真にある三角形の3つある窓が暗い黄色に光って顔みたいだった)
- なのでアルコール度数の強いSIMEIで頭をぼーっとさせてちょうどだった(笑)
- 翌日、Waregemのレーススタートを見た後、この大聖堂に戻ってきて神秘の子羊を見た。入口でお金をはらって暗い展示室に入ると太ったお姉さんが「日本語?中国語?」と聞いてくるので「え、売り込み?」かと思ったら入場料込の音声解説スピーカーを貸してくれるというのらしい。
- はからずして1時間近くをそこですごした。解説テープも詳細にわたる。折りたたむ用に作られている祭壇画には表裏たくさん面があって、描かれた人々や、背景の建物、それぞれに諸説あって面白いし、なによりその絵に描かれた世界の心穏やかな様子に引き込まれてしまった。
- 心が落ち着くすばらしい絵だ。草花はボッティチェリのように繊細かつ正確に描かれているし、世界は理想的に光に満ちている。聖職者や群衆など、人物を一人一人見ているとなかなか曲者っぽく、現代に通じそうな表情のリアルさと、それでもなお全体を支配する静けさがなんともいえない。
いろんな国からきたらしいたくさんの人たちがそれぞれの国の解説テープを耳にあてて、じいっと薄暗い展示室にたたずんでいた。テープを耳にあてないでベンチにこしかけてただ見ている老人もいた。
- Ghent Altarpiece - Wikipedia, the free encyclopedia←このwikiは絵の写真が多くてよい。
- The Ghent Altarpiece | Essay | Heilbrunn Timeline of Art History | The Metropolitan Museum of Art←メトロポリタン美術館の解説。
駆け足だったのでGhentの見どころはかなり見逃したと思うが、神秘の子羊だけはスキップしないで見ておいてよかった。絵自体の数奇な運命とは別に、本当に心の清涼剤、安定剤のような絵です。。
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- Ghent Altarpiece, the teft of the Just Judges - The Adoration of the Mystic Lamb by Jan & Hubert van Eyck in Saint Bavo Cathedral of Ghent←じっくり読んだらめっちゃ面白そう!
- 1934年一部パネル「正義の裁き人」部分の盗難事件が発生。犯人は100万ベルギーフランを要求。その年の11月、一人の男が「自分だけがその行方を知っている」と死の床で告白、その秘密を明かさぬまま墓に持って行った。
- で、そのあとも見つからずじまい。現在もオカルトめいた手法でさがしてみたり、記念碑や教会の床を壊してみたり、ゲントの鐘楼にあるとかいわれたりしているらしい。
*1:自分が見る気になったのはお友達の強力推奨によるもの
*2:一時は例のノイシュバンシュタイン城にあったらしい