CXhairs presents シクロクロス世界選手権2016 レビューナイト with ジェレミー・パワーズ に行ってきました
お台場は盛り上がりましたねー。全部は見られなかったのですが、男子エリートを始め、見応えある戦いが随所にあった印象です。で、その話は別途ということで、Rapha Cycle Club Tokyoにおいて土曜日の夜に行われたトークショーに行ってまいりました。
- Rapha Cycle Club Tokyo は昼間のレース疲れをものともしない人たちが詰めかけていました。In the Crosshairs (CXHairs)というサイトでシクロクロスのレースレビューを書いているBill Schiekenさんがメインのトークを行い、翌日のエリートレースの最有力優勝候補のJeremy Powersも臨席。Rapha Japan代表矢野さんの逐次通訳でヒアリングに自信のない人も(私だ)楽しめました。
フィンガーフードや飲み物を楽しんで小腹も満たせました。なんてお洒落。
- この日のイベントはBill Schiekenさんがレースのビデオを題材に、#SVENNESSの動画で好評を博しているレース解説をするというもの。
(Bill Schieken氏)
(モニターわきで語っている、ひげの男性がBillさん。)
- http://www.cxhairs.com/ ←In the Crosshairsという彼のサイト。米国やヨーロッパのレース講評や、選手を招いてトークするPodcastのコーナーもあり、そして有名な#SVENNESS。
- https://vimeo.com/148756834 ←現在公開されている最新版#SVENNESSは、今シーズンのKoksijdeのレースを解説しているもの。
(https://vimeo.com/148756834より画面キャプション)
- レースビデオの進行に沿って時折こんなキャプションが挿入されてゆくのですが、かなり興味深いのでおすすめです。英語が瞬時に読解できなければ、一時停止すればよいのです(笑)
- Billさんは長身の方でもともとバスケットボールの選手だったそうですが、故障後は指導などをしていて、そのため、試合の動画を見て分析することについてはお手のもの、シクロクロスを解説しているところがほかに見当たらないというところで始めたのだそうです。
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(Jeremy Powers選手)
- http://www.cyclingarchives.com/coureurfiche.php?coureurid=4003 ←おもな戦績、チーム経歴(Cyclingarchives)
- https://en.wikipedia.org/wiki/Jeremy_Powers ←選手としての道のり(Wikipedia)最初BMXで自転車に入り、マウンテンバイクと、オフのシクロクロスで自転車にどっぷり。2001年のTabor世界選ジュニアで17位に入り、ワールドクラスの自転車レースを体験、当時アメリカではまだまだ未発達なシクロクロスではなくロード選手の道を選んだのだとか。
(日曜日のエリートのレース、終盤のPowers)
(手前に座っている男性がPowers)
- Jelly Bellyでロードと掛け持ちしてTour of Californiaなどに出場していたところ、2007年に米国で最初に結成されたプロのシクロクロスチームCyclocrossworld.comでシクロクロスシーズンは過ごすようになり、2010年にUSGPという国内シリーズを勝ち、ワールドカップでシングルリザルト、2012年に国内タイトル、2013年まではロードと掛け持ち、昨シーズンからシクロクロス専従となったのだとか。
- アメリカも以前はシクロクロスだけでは食べてゆけなかったけれども、今ようやくそれが可能になってきたとのこと。シクロクロスシーズンのオフが短くなったというのもあるようですが、オフの間彼は自転車クリニックや指導をしているようです。ロードで夏場も長期巡業の生活と比べたらずいぶん家族思いな暮らしができそうですね。
- さて、トークショー前半はJeremy Powersの米国内レースを中心に彼の走りについての解説、後半は、先日のZolderの世界選手権男子エリートレースの解説しているリリース寸前の#SVENNESS最新版を見ながらのトークでした。
- とにかく、前へ、前へ。位置取り争い、米国内レースだと知り合いだらけで、声を掛け合ってという面もあるけれども、ヨーロッパで何十か国もの選手が出てくるワールドカップなどになると言葉ではなく、肘でやりあうしかないという話。
- シクロクロスでは、スタート後最初に前方から取り残されるとどれだけ後方に追いやられてしまうかという実例を矢印で。
- 舗装路区間というと、ヨーロッパの回りの選手は足休めどころ。しかし、アメリカの選手は、そこでハッスルしないと前に出るチャンスがないのだとか。でもそうすると全く休めなくなってしまいますね。。
- そんなアメリカの選手、以前は本場の選手たちにはスルー扱いだったところ、先日のレースでJeremyさんの進路をふさいでしまったVan der Poelが後でショートメッセージでごめんね、とJeremyさんに言ってくる程度に市民権を得てきたのだとか。
- 後半。世界選男子エリートのレースを題材とした#SVENNESS未発表最新版事前公開。ファンデルハールがラスト勝負をかけたシーン。難易度の非常に高い急坂下り+直後コーナーでVan Aertが毎周回片足をペダルから外してコーナーを曲がっていた場所で一気にVan der Haarがすごいスピードで抜き去ったシーンは、プロのJeremyさんからみてもイチかバチかの超絶プレーな賭けだったそうです。
- こういう特別なカードは、レース序盤ではなく勝負どころの最終局面までとっておく、ジョーカーのようなものだそう。
- 勝負の分かれ目となった登りのあとのコーナー区間ですがVan der Haarがレース後にメディアに語った「インナーに落としたつもりが、アウターに入ったままだったミス」は本当の遅れの要因というよりも、むしろ言い訳的なもので、それ以上にもう彼の脚があの場面では残っていなかったようである、という説明をBillさんはしていました。ふむふむ。
- Billさんがとても好きなセクションというのがZolderのキャンバー登り、例の上ラインからでも下からでも行ける折り返してのぼってゆく区間。SVENNESSの第一作めでも取り上げられていた。Van der Haarが上側を通過したときにJeremyさんが「ここは下のほうがよかった」とコメントしたので、「今回のみの話なのですか」と聞くと「そう。今回の状態では上を行くとパワーがより必要となる。その時の状況や選手のパワーにもよるけれども、Van der Haarについては今回は下のラインがよかったのでは」というようなことを言っていた。
- あとBillさんがいままでのレースで最もエキサイティングだったのはどれ?と聞かれると、今回の世界選もそうだけれど、あとは2007年、例の「飛ぶシケイン事件」カメラバイクにコーンが飛ばされ、それによりWellensとNysが転倒し、あわや米国人Jonathan Pageが優勝か?などのドキドキ展開だったレースを挙げていた。何を隠そう、私がシクロクロスにハマったレースである。↓
(アクシデント後の展開がエキサイティング。一度は、観ることをお勧めする。この世界選後、カメラバイク関係者を相手取って手首を骨折しながら完走したWellensが訴訟を起こすと息巻いていたという記事を読んだ記憶がある。)
- Jeremyさんは子供の頃エネルギーが有り余る問題行動があったようだけれど、自転車競技と出会ってうまくいくようになったとのこと。温厚で、とても親切にファンサービスする彼には好感をもちました。今度アメリカにおけるシクロクロスの発展と展望についても話をお聞きしてみたいです。夜までイベントに出て、そして、翌日のあの勝負ですよ。色々な面で楽しませてもらいました。ありがとうございます。
(FRIETENチームのステッカーをあげたらにこにこして、私の着ていたFRIETENのジャージのロゴには目がとまってたよ。とコメント(やっぱり笑えるのだろうか。。))
(翌日のレース後、ファンサービスに余念がない。親切な態度を崩さないプロ。)
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土曜日の晩にラファサイクルクラブで行ったJ-Pow+CXHairsイベントは若手レーサーに来てほしかった。 #svenness でお馴染みのビルは元バスケのコーチ。相手の試合のビデオを繰り返し再生しては分析して戦略を立てたりしていたのをきっかけにシクロクロスでも応用させたわけです
— DAISUKE YANO (@daisukeyanocx) 2016, 2月 15
矢野さんのツイートにもあるけれどレースに出る人たちもこういう見方をして分析するっていうのが浸透するとよいですね。テクニカル、戦術解説実戦用、というレクチャーができる人、国内にもいらっしゃると思いますけど。
実は私、現在のRapha Cycle Club Tokyo訪問は初めて。お洒落サイクリストとは最も遠い人種なのでちょっと敷居が高かったんですが、それを上回る今回のコンテンツの楽しさ(写真家さんのトークショーもあったが、全部出るわけにもいかず)*1。今後も、色々と楽しみにしております。
*1:Raphaの小俣さんには「来ると思ってました」と言われました。苦笑