tannenbaum居眠り日記💤

観戦者の目による、おもに自転車(おもにシクロクロス)関連のすみっこネタブログです。

炎上したけど、元気です(Tour of Britainのハモンド プチインタビュー)

贔屓選手の動画をみつけると、お菓子をもらった子供のような気持ちになり、バッシングされるのを見ると心痛めるファンの心理。ロジャー・ハモンドについては引退後6年経った今も時折そんなアップダウンを味わうことがある。
DAZNで放送中のTour of Britainの解説に知り合いの鈴木太地さんが出ているというので関連情報を見ていたら、レースの公式ツイッターアカウントにハモンドの短いインタビュー動画が出ていた。わーい。

選手でいることと監督業と、どっちが好きですか?という質問。

現在ブエルタチーム、ケベックチームとは別部隊でTour of Britainに参戦中のTeam Dimension Data を指揮しているみたいだ。
ニコニコしてリラックスした表情でいつもの早口でコメント。
(適当訳)

・どっちも、自分にとってはハードワーク。選手の場合は、とにかくひたすらトレーニング、そして、自分に非がない要素で勝ったり、成果なしになったり。マネジメントは、駆けずり回って、全て細かい所まで手配するけど、実行するところは他者に引き渡す。選手に。

・去年も今年もとても強いチームで、自分はラッキー。

・自分の準備したものを、コントロールのきかないところに引き渡す。それが、エキサイティングなところではあるけど、自分は物事を掌握することが好きでね。

まあとにかく、リラックスして元気そう。ホームゲームのツアー・オブ・ブリテンだし。自身でステージやポイント賞も獲ったことある。

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(この英国チームのジャージって、「うり坊」とか言われるすごいデザインだった。。)

・ 鈴木さんの解説で英国がトラック競技大国となった経緯の話などなるほどと聞いていると、この最終ステージのゴール地点があるカーディフの街中に入る辺りでチームの総合エース、ボアッソンハーゲンが飛び出して逃げ切り、総合を8位から2位にジャンプアップした。今朝のニュースをみてまわると、残り2-3kmでアタックすることは朝からチームで決めていた事らしい。序盤ステージの降格処分もあって総合連覇は逃したけど、胸のすく走りだった。

・昨日のコメントを探していたら9年前のこのレースで、Team Columbiaで同僚選手だったハモンドが、後ろの集団から「行け、行け」、と無線で叫ぶ中、ボアッソンハーゲンが逃げ切り勝利をした、という記事にぶつかった。ボアッソンハーゲンは昔からこのレースが得意だったんだね。たぶん今回も無線でチームカーからのロジャーの「行け、行け」を聞きながらゴールしたのでは。

 http://www.cyclingweekly.com/news/latest-news/tour-of-britain-boasson-hagen-snatches-victory-in-stoke-on-trent-92878

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 今年、2017年のツール・ド・フランスでロジャーはスプリントステージの指揮を任されていたようで、カヴェンディッシュがゴールスプリントで転倒負傷した際、審判に抗議した結果サガンがレースから除外されたことは相当な物議を醸した。さらに直後に勢いでロジャーがツイートした内容(さらば、みたいな)からいわゆる炎上が起きた。


それはチームのマネジメントとしてかなり不用意な発言だったけれど、抗議した段階では、カヴも肘を出していたことはロジャーにもコミッセールにもわからなかった。

事が終わった後になって色々集まる違う角度からのゴールスプリント画像・映像を見て、鬼の首を獲ったかのごとく他の幾多のコメントと同じ内容を@ツイートする、数知れぬ人々の様子にSNS炎上の恐ろしさを否応なく実感した。
もしカヴとサガンの立場が逆だったら、世間の反応はどうだったのか?アンチの多いカヴのことだ。贔屓が世間にバッシングされる辛さとネット世界のファシズムみたいな恐ろしさを実感した。

問題となった彼の感情的なツイートにはロジャーがカヴェンディッシュを弟のようにかわいがってきた背景があるように思う。
カヴがネオプロのときから遠征で同室が多く兄のように慕われ、自宅に下宿させたり、リードアウトで何度もカヴの勝利に貢献した。レンショーを発射台にしたHTCトレイン常勝時代の直前。だから二人は普通の選手と監督の関係ではない。
サガンとの競り合いで一方的な被害者として骨折したように見えたカヴを見て、外敵から子供を守る動物の母親みたいになったのではないか。実際、そのときのハモンドは「自分の子供が傷つけられたような気持ち」とコメントしている。


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(2007年のT-mobileツール出場メンバー。ハモンドは選ばれなかった。)

2007年のツール・ド・フランスはロンドンスタートで、ロジャーはT-mobileの事前セレクションで最終ロングリストに載っていた。世間の評判でもフランドルの平地ステージ狙いとスプリントのアシストとして出られるだろう、ということで私は1ポンド250円という馬鹿げた為替レートのロンドンに、グランデパールを観に出かける手配をした(サンドイッチと飲み物とサラダで2000円くらいになるので、昼と夜のごはんを兼用にして、痩せた)。

tannenbaum.hatenadiary.jp


しかし、チームは、経験浅いカヴェンディッシュに、グリーンジャージを争う将来のため場数を踏ませようとカヴのほうを選んだ。地元開催のツール出場を期待しているロジャーに結論を伝えたアルダグ監督は、かなり苦しい思いで電話したらしい(アルダグは現Dimension Dataの総監督でもある)。

 

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その後、結局ツールには出場することなくクラシックスペシャリスト(と、カヴの発射スペシャリスト)として選手生活を終えたロジャーが、後日、ツールでのあんなトラブルで皆の記憶に残ることになり、また、それがカヴがらみ。彼はカヴのために働く星の下にあるとしか思えない。

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誰からも曇りなく好かれる一点の失敗もない経歴の人ではなくても、彼が彼であることには変わりはないし、日々仕事に邁進して、周囲に必要とされ、元気にやっている姿はファンとしては力をもらえる。
(パリ~ルーべでは一度勝ってもらわないと困る、フランドルではゲントでは、、、と躍起になっていた時代が懐かしい。)