tannenbaum居眠り日記💤

観戦者の目による、おもに自転車(おもにシクロクロス)関連のすみっこネタブログです。

ディック・フランシス「勝利」−引退後自転車ミステリーを書く選手はいないかなあ。

いわずとしれた競馬ミステリー作家の2000年作の小説を久々に読んだ。

勝利 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

勝利 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

ディック・フランシス「勝利」
先日友人に「ディック・フランシスの文庫本、旅行の友にお勧め」と言ったところで読みたくなったのである。
ガラス作家の主人公が親友の騎手から、レース中の落馬事故で死ぬ前に預かったビデオテープのために命を狙われるという話。
悪女ローズの果てることない暴れっぷりと成功者である主人公への憎しみの強さ、思わぬ身近にいた敵が恐ろしかった。それでも主人公は「人生のテニス・マッチで私が必ず彼女に勝つ」と自分を信じて立ち向かう。
引きこもりのネット少年がでてきたり、現代的な素材を扱うところなど老齢の作者ではあるがまだまだ元気である。
あいかわらず主人公が意思が強くて自分の仕事の道では相当な達人。今回はガラス工芸作家が重労働であるというのが興味深い。

ディック・フランシスの本を読むと騎手が怪我が絶えないが完全に癒えるのを待つことなくレースに復帰したがる様子など、自転車レース観戦するようになってから共通点を見出すことが多い。

「障害騎手たちが、時には肋骨や腕の骨折その他の負傷を抱えながら歩き回るのを見せてくれた。二ヶ月ほど騎乗できなくなるのは脚の骨折だけだ、と彼が言っていた。彼にとっては、打ち身などは日常茶飯事で、なにかほかのことを考えて頭から振り払うことにより、苦痛に対処していた。」

また、ディック・フランシスは現役時代障碍レース全英チャンピオンや女王陛下の馬に乗るなど一流の騎手であった。引退後書き始めた小説でこれほどの名声を得るとは、15歳までしか学校に行っていなくともこれほど人をひきつける文章が書けるとは、驚きである。
自転車選手で文章得意な人は日記サイトなどで散見するが、エッセイじゃなくて自転車レースを題材にしたミステリーとか書ける選手がいたら面白いなあ。

http://homepage1.nifty.com/PegasusSquare/dick01.html
↑「競馬とディック・フランシス」ディック・フランシスと著書紹介のサイト。