tannenbaum居眠り日記💤

観戦者の目による、おもに自転車(おもにシクロクロス)関連のすみっこネタブログです。

自らの芸風を探せ! 大野麥風展@東京ステーションギャラリー:Art Portfolio of Fishes by Bakufu Ohno)

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ふと、会社の帰りに東京駅出口すぐにある美術館にいってみた。それが、大ヒット。
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こんなに丸の内北口出てすぐ。

http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/now.html ←これが展覧会HP「大野麥風展
「大日本魚類画集」と博物画にみる魚たち」。

  • 博物画は、結婚間もないころ、パルコギャラリーで荒俣宏氏のコレクション展に遭遇した時に興味を持ち、このとき放出された荒俣氏のコレクションの何枚かを買い求め、その後Bunkamuraで行われた荒俣氏の博物画についての講演を聞きに行ったことがある。

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  • その時の話で今も印象に残っているのは、

何かを収集するにあたっては、自分なりのテイストに基づいて。自分のテイストを探してみるとよい


と言うもの。博覧強記で知られる荒俣氏だけれど、その知識の限り何でもかんでも矢鱈に集めまくっているわけではなく、自分の興味や関心の方向に応じた自分らしい色合いのものを集めている、のだとか。恐らくそうすることにより、より深くその世界を知る端緒もつかみやすいのではないか。ということなの、かな?
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  • さて、思い付きで見ることにした大野麥風の魚類の博物画である、まずは普通の油絵や紀行画。画家仲間を描いた単純な線のイラスト風の絵などとても達者で、うまいなとは思う。が、自分には引っ掛かりがない。
  • ところが展示フロア変わって大日本魚類画集。どの版画も輝いて、こちらに迫ってくるではないか。なんというか、「エッジが立っている」。これが本当に版画なのかと唸ってしまった。

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(買ってきた絵葉書でしかその雰囲気を伝えられないのは残念です。ちなみに入場券の半券はお魚の形)

  • 手刷りで200回、直接筆で描いた絵 のよう、いや、それよりももっとカッチリとしなやかに明快なのはやはり彫られたものだからか。試し刷りに対して修正を入れている麥風の細かい指示書きは現代の仕事人たちの琴線に触れそうな、身近だけれどこだわりの強いプロ意識のかたまり。
  • この画集を通じて、麥風はこの画集を手掛けることによって画家としての「自分の道」というか「テイスト」「芸風」を見つけたのではないかと思った。惹きつける力が違う。この出会いは幸せだったのだろう。。制作関係者は大変だったかもしれないけれど。
  • 雲母をまじえる雲母(きら)刷り、というのがあるのも初めて知った。角度を変えてみるとキラキラ。
  • 当時「潜水艦で繰り返し海中の魚の生息する様子を観察」することがどれくらい贅沢なことだったかわからないが、そのおかげで魚たちの様子が、図鑑用の絵というより、自然に生活している環境とともに、リアルでかつ愛らしい表情も交えてえがかれている。
  • さらに魚類学者と、釣りと食の随筆家の文章が添えられて、またその文章が良い。展示会場にはクリアファイルにそのコピーが入れられて展示されていたが、しばし読みふけってしまった。こうして食べるとおいしいんだ。。。とか(笑)学者の文章は英訳も添えられていたらしい(戦時下、途中で訳者は帰国してしまったので英訳は途絶えた)
  • ほしいなあ。。印刷悪くてもいいから再現版はないだろうか。。と思ったが、当時のたとう紙に入れられて(表の題字は谷崎潤一郎!一回一回頒布されたものが時折古美術の世界で出回るだけだそうだ。どこかの出版社、出してくれないかなあ。。
  • 麥風と、彫り師刷り師の渾身の共同作業を毎回頒布会で購入していた西宮書院のお客さんたちがうらやましい。
  • ということで別の日にこの画集のコレクターで魚類研究の方のギャラリートークを会社を早退して聴きに行ってしまった。この画集の一枚であるボラの絵と出会って以来、魅せられて「大日本魚類画集」の版画たちを収集しているそうである(飾るためにたとう紙は店に置き去りにして買ってゆくお客が多いせいか、たとう紙だけのコレクションもしているらしい)
  • 魚類のプロとしては、かなり正確(生息場所の環境やウロコの数まで)に再現していると言えるが、時々不正確で種類を特定できない場合もあるが、それは絵なので、と納得しているそうだ。

・・ということで思わぬ収穫の今回の展覧会鑑賞だったのでした。この展覧会は9月23日まで。街中で気軽に見られる水族館のようでもあった。
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自分の芸風を見つけて、それに邁進する人は素晴らしいものを生み出しますね。自分も生きている間に何かを見つけたいものです。
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(参照)観に行った人のブログ等を見ると予想以上に楽しくて、ニコニコしている人が多い。

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東京ステーションミュージアムは改装前は何度か行ったことがあったが、今の形になってからは初めて。金曜日は20時まで開いているので、勤めの人は金曜日もねらい目だと思う。赤レンガの建物を生かしたつくりになっていて、建築的にも興味深い。
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外に出ると、丸の内の夜景と月明かり。