tannenbaum居眠り日記💤

観戦者の目による、おもに自転車(おもにシクロクロス)関連のすみっこネタブログです。

サルとトドのオランダ・ベルギー珍道中(その2)モリタロウは見た!本場のレース(後半)本気な人には道がある。

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【一人目:モリタロウ(後半)】
10.オランダ人の「すっきり片付け主義」について
・池本さんは綺麗好きでマメに片づける人ですが、自分はその点で遠征中に何度も叱られました。身の回りや荷物が整理されていないことで、スペース的にも時間的にも回りに迷惑をかける。ただでさえ、日本人があちらの国のスポーツをしているというだけで不利なのに、そういう面でもマイナス面を周囲に見せてはいけない。ということをよく言われました。

・レース時の荷物を一つにパッキングするよう言われたのですが、自分は一つにまとめるようなバッグをもっていなかったのと、それまでそうしていなかったので大変でした。言われてから、迷惑かけないよう前の晩にきちんと揃えてから寝るように気を付けました。自分はこれまでレース時の準備などはその場で考えついた順にやっていたのですが、池本さんは普段のレースから一切迷いなく動いていて、そうできる準備をあらかじめしています。
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(池本さんの国内遠征時の車内。)
[私も池本さんの遠征用の車内がきれいに片付いている印象が強いのですが、あの「片付け主義」はオランダの文化というか、常識なんでしょうか、むこうの選手の車内はみなああいう感じなんですか?]
・そうです。日本の一般的な選手と比べむこうはどの選手の車内もとてもきれいですね。選手にサポートスタッフが必ずついてきているのもあるのでしょうが。
・オランダは国民性なのか、家の中も町も道路もとにかくきちんと片付いてきれいでした。
・滞在したヒュープさんの家は部屋の中に余計なものがない。床にはモノが何一つ置いてありません。食器棚の中にはとてもキチンと揃えたフォークが並んでいました。大きな倉庫が家の敷地内にあって、余分な道具やものが倉庫に整理されて入っているんです。
・調味料や食材も部屋の表にでておらず裏に収納するようになっていました。しまう場所がはっきり決まっていて変えないから、池本さんは数年ぶりのヒュープさんの家なのに、ふっと裏にはいっていってほしい調味料が持ってこられるんです。(←主婦として参考になります)。決められた所と違うところにモノを置くと、すかさず注意されます。
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(部屋の輪郭がちゃんと見える。日本はこうはいかない家が多い)
・夜中の一時頃まで親戚を招いたホームパーティーでたくさん料理を出しても、寝る時までにあっと言う間に台所がピカピカに片付いていたのも驚きました。備え付けの食洗機がとても大きくシンクは小さく、こまかいことをせず残りモノは全部捨て、汚れがついたまま食洗機に全部突っ込めば食器が片付くようでした。
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(池本さんの知人のスーパーマーケットの事務所にあるキッチン。事務所なのに、大きい食洗器らしきものがある)


[自転車店の写真をみても、パーツを隅から発掘するようなお店も多い日本とは雰囲気が違いますね。すっきりしています。]
・車のディーラーのショールームみたいな感じが多いですね。店頭にはスモールパーツは出ていなくて、裏に分類収納されていました。
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(この店の裏の棚は十分整理整頓されていると思ったが、池本さんはこの写真に対し「あまり片付いていないようだ」というコメントをしていた。我が家のフードパントリーはこの棚よりもっと乱れている。オランダ人には見せられない。)

[道もそうなんですね。]
・路肩がきれいて、落ち葉が落ちていないです。清掃車がよく掃除しているようでした。サイクリング用道路もストレスなく走れるようにできていましたね。
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11. ビッグレース、Diegemの沈黙と霧ヶ峰
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(Van AertやVan der Haarら有名選手が並ぶLoenhoutの試走風景、手前のFIDEAは誰だろう)
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(アップしているのはFIDEAのVan Kesselか?)

[SuperprestigeのDiegemとBpostBank SeriesのLoenhoutという、シクロクロス界ではワールドカップよりも実質的な地位が高いとされる最高峰のビッグレースに身を置いてきたわけですが、どうでしたか。]


(レース動画)
・レベルが合わなかったというのはあると思うのですが、それを上回る経験があったので、出場して良かったと思っています。
・Diegemのスタート前、ナイトレースですが、60名以上選手がいるのに誰も音をたてず静まり返って集中しているんです。それは今回の遠征の中でも特別忘れられない瞬間になりました。ちょっと以前の信州クロスの霧ヶ峰のスタートのシーンとした様子にも似ているように思いました。レース内容としては歯が立たなかったのですが、それにもかかわらず、Diegemのあのレースを走ることができたのはよかったと感じています。
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(明るさの残る空が、だんだんと黒くなって、完全に夜に)
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・Diegemは照明が効果的で夜の光景を箱庭というか劇場のように魅力的に見せていて、走っていても気分が良かったです。
・雰囲気だけでなくコースも面白かったです。アップダウンが適当にあって路面も一部泥があったり、街中の路地裏を走ったりでバリエーションがありました。無我夢中で乗ってしまったのですが、泥は乗らなければよかったとあとで思いました。池本さんは降りていました。
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(こんな狭い路地裏がコースの一部。レース動画にも映っている)
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(洗車場。中央が松井さん)
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(ピットのハリーさんと松井さんにも照明が当たって劇場のようである)
・LoenhoutはBMXのコースを利用していたのですが、ジャンプできないと勝負にならないところがありました。溝と、それをジャンプで超えるVan Aertの写真(Cyclephotos)溝がコースを斜めによぎっていたりして、それぐらい高速で突入できるコースだったのもあるんですが、トップ10の選手はみなバニーホップで通過していました(←モリタロウもバニーホップする人になったら、皆喜ぶと思うんだけど、と言ったところ爆笑)

[DiegemもLoenhoutも場所柄、観客のガラがよくないと聞いていますが。]

  • ディーヘムのほうがガラが悪かったように思います。飲んでいる人だらけで。

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(投げ捨てられたコップが一面に。ひどい)
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(スタート地点の背後に見える、教会の塔)

12.日本との違い
[レースで自分が勝てそうなレベルの人は居ましたか?]
・いません!(断言)DiegemやLoenhout、ナショナルレース(のエリートクラス)に出場するのはプロ、セミプロ、サポートを受けているハイアマチュアだけです。招待されていない自主参加の選手も、プロに近いレベルの人たちでした。自分が少し話したフランス人の選手は本業の休暇をやりくりして取って、年末年始を利用して走りにきているようでした。
[中間さんもサポートを受けているハイアマチュアではないのですか?]
・(無言)
・自分としてはオランダのナショナルレースをもっと走りたかったです。ナショナルレースも「上を見ている」プロ狙いや、ロードのプロなどが走っています。ナショナルレースはエリートの下のアマチュアクラスというのがあるのですが、それも、エリートレースに出るだめ準備段階の人たちが走るもので、エリートで走れるぐらい速い人もたくさんいて、やはり「上狙い」の人たちばかりです。日本のように素人が自分の趣味で出場するレースとは全く違います。それ以下のレベルのレースについては、よく知りません。
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(林の中のナショナルレース、Rouselにて)
・ファン(楽しみで走る人)は「レース」においてはみかけませんでした。今回池本さんが自分の帰国後オランダのナショナルレースGP Gronendaalでギリギリ完走しましたが、日本人がナショナルレースに出たとして、完走できるレベルというのは日本のだいたいトップ10クラスの人たちではないかと思います。

※(ナショナルレースについて)http://www.knwu.nl/veldrijden/wedstrijdkalender/201601 ←オランダ車連のHP, ナショナルレースの今年1月のスケジュール。 UCIレースの下のランクに位置する国内シリーズだが、レベルは高く、オランダ、ベルギー以外のUCIレースに匹敵するレベルではないかとの事。なおエントリーフィーは無料だとか。

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(Rouselのレース終了後。渡欧直後の移動疲れと、日本とのスピードの違いにぐったり)
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(左の男性がMike Teunissenのメカニック。右はZZPR(旧ORANGE BABIES:Twan van den Brandの所属チーム)のメカニック。)
・むこうのレースでは、ともかくスピードがないと話にならないことを痛感しました。
・スピードを落とさせる箇所を作らないコースづくりがされていました。それとは逆に、上りシケインなど、コース中にかならず減速させる区間を設ける日本は敷地の狭さや、安全面を考慮しているのではと思います。しかしその結果、日本のレースは本場と別物になってしまったように思います。
・レースに関する情報の告知がないです。知っている人がいないと受付の場所すらわからないし、駐車もどこにしていいのかわからないです。
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[中間選手は今シーズンUCIポイントを獲得(1ポイント)して臨みましたね。]
・遠征時のレースで少しでもよいスタート順を取ろうと、出発前の国内レースでUCIポイントを狙っていた(中間選手は猪苗代でUCI1ポイントを獲得)けれども、UCIポイントをもたない池本選手とDiegem,、Loenhoutではスタート位置は変わりませんでした。また、Rouselのナショナルレースでは池本選手が自分と間違われてUCIポイントをもっているからと最前列に連れて行かれましたが、走り出すとあっという間に実力に応じた位置で走ることになっていました。
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(Loenhoutのスタート前風景。確かにUCIポイントを持っている中間選手と、持っていない池本選手の位置はほとんど変わらない。)
・スタート順が後ろでも日本ほどスタートストレートのコースが狭くないので、抜かしどころはありました。Loenhoutの時、ラース・ボームが全くクロスにでていなかったので自分の近くからスタートしたけれど、スタート直後の密集した中をすいすいと前に出て行きました。あれを見るとスタート順が悪いからという言い訳はできず、結局脚で順位が決まるのだと思いました。
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(スタートフィニッシュのストレート区間のコース幅が広い)
・開催スケジュールが日本のように詰まっておらず、試走時間が十分にありました。各カテゴリー(トップ、アマチュア、アンダー、ジュニア)の間がそれぞれ30分くらい確保されて、毎回そのときに試走できるようになっていました。最後のトップのレースは15時頃開始。)日本のようにカテゴリーが沢山になったら、詰め込まず二日間のレースにするという選択もあると思います。
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(スタートの時点でかなり陽が傾いているように見える。)
・エリートクラスの下がアマチュアクラスなのですが、かなり速くエリートで走れそうな人でもエリートで走るための準備段階として出場する人が多く、日本のカテ2とは違う位置づけのように見えました。シマノの松井さんが出場しても完走できないレベルでした。自分たちは国際ライセンスでエリート登録だったので、エリートクラスに出場しました。
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(Rouselのスタートリスト)
・なんでも平等ということではなく、ピットも駐車場所も実力次第で優先されます。ピットもサポートしている選手の順位次第で優先順位がはっきりしています。日本はもっと皆が平等な感じが強いですが、むこうではその点厳然たるものがあります。
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(ピットでのヒエラルキーは選手の順位によって決まる。後方に控えざるを得なかったハリーさん)

  • 駐車場所については今回の遠征では竹之内選手のサポートのランジットさんが確保した場所(ラボバンクのバスのとなり)を使わせてくれて、大変助かりました。そうでなければとても不便なところに車を止めざるを得なかったと思います。

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・オランダのナショナルレースについては、昔のシクロクロスミーティングに雰囲気が似ているなと思いました。淡々とアナウンスが流れて、ただ、レースするだけ、さっと集まって自分のレースが終わったらさっと帰る。自分はそういう雰囲気が好きですね。こういうことを言うと差支えるかもしれないのですが、あまり賑やかすぎるよりも静かに集中するというレースが好きです。お台場でカウベルの音や人々の歓声でベン・ベルデンが後ろから声をかけているのも気づかなかったため、頭を殴られた、という事件も自分にはありましたし(苦笑)。

・ナショナルレースでもお互いに言葉をかわさないわけではないのですが、レースが社交の場という感はなかったです。ツールトクトでも長々と無駄話をしないで、自分のペースで走って、話す機会があればちょっと話して、また走る。自分が走り終わったらとっとと帰る。それ以外の要素はない。そのような雰囲気はかつての信州クロスを思い出しました。あのような雰囲気が、自分は好きです。
下の4つは、Rouselのナショナルレースの動画。松井さん撮影。音声あり




(ピット周辺から撮った動画だが、たしかに、淡々とレースだけしている印象。)
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霧ヶ峰のスタート時。2012年。)

ツールトクトは森の中を走り抜けるサイクリングイベントですが、走っていてとても気持ちよく、それだけでもオランダに走りに行ってもよいぐらいです。
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  • ツールトクトのほうには趣味で走る人たちが出ていました。それでも皆フォームは正しく、スピードは速かったです。路面の砂地が滑りやすく、風はきつく天気は悪く、そいういった中で正しいフォームで走らざるをえなくなってゆくのでは、と池本さんは言っていました。
  • 日本のファンライダーはツールトクトを走るだけでも十分満喫できるように思います。


(楽しそうに走るモリタロウ選手)
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受付。荻島さんはしょっちゅうツールトクトで走っているらしい。確かに荻島さんのブログで毎週末Tourtochtを走っているという記述をよく見かけていた記憶がある。

※(ツールトクトについて補足)http://www.ntfu.nl/kalender/kalender.aspx ←サイクリングイベントのカレンダー。クラブチーム主催らしく、毎週末多数開催されている。当日受付可能。参加費5ユーロぐらい。

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(途中の補給地点。年齢が高いように見えるが、こういう場所で止まって食べるのは年長者で、若い人たちは止まらずに走り続けるのだそう。荻島さんも休憩せず走り続けたらしい)

13. 竹之内選手の凄さ
・今回竹之内選手に色々助けてもらったのですが、彼の凄いところはなかなか日本には伝わっていないように感じました。
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(このあたりまでオタクっぽいファンが入り込んでくるのは、竹之内選手目当てなのではないか。)
・継続してベルギーで活動し、協力してくれる人がいて、活動するための自分の場所があって、さらにちゃんと現地のファンがいる。自分たちがDiegemで竹之内選手の確保した場所で(本人は負傷のためDNS)アップしていると、いろんな人から竹之内はどうしたと聞かれました。すこし前現地のTV番組に取り上げられたせいもあるかもしれないです。彼の継続した努力と、それによって築いてきたベルギーでの基盤については、日本チームもお世話になっているようです。
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・スポットで遠征する者にはけしてできることではないと思います。日本の他の選手はみな本業や別の要素があってそこまでしていない、できないのですが、そこが竹之内選手と他の選手との本気度の違いではないかと思います。

14. 継続
シクロクロスは代車やスペアホイールなど装備がたくさん必要で、洗車もしなくてはならないので、身軽に出かけてレースに出るということができません。海外でレースできる環境を維持することはちょっと行っただけの人間には難しいです。
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(一人当たりの渡航荷物はこの量。ある程度とおりがかりの人が手助けしてくれるらしいが、着替え関係をコンパクトにまとめたとしても相当な量の荷物。)
・継続して走る人間がいなくなるとその基盤は続かなくなってしまいます。池本選手は以前のつながりでオランダにそういう環境をまだ用意できますし、竹之内選手はずっとベルギーにいることでそれを維持していますが、今後日本人であとに続く人たちがいるのかどうか。
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(辻浦選手が毎年ヒュープさん宅に置いて行ったジャージがいまだにきれいに飾ってある。)
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(黄色いジャージが鈴木祐一さん、その下三人並んでいるのが杉山さん、佐宗さん、鈴木雷太さん、黄色い鈴木さんの下の青いジャージが鈴木雷太さん)
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(何年の代表チームだろうか。左から私服男性がハリーさん、鈴木祐一さん、山下さん、杉山さん、鈴木雷太さん、小坂正則さん、大原さん、藤森さん)

15. 本気で思えば
・手配が自分でするのは大変だからとか、上げ膳据え膳でないとどうしていいかわからない、、等ということで行きたくても行かないでいる人が多いのかもしれないけれども、一度ぜひシクロクロスの本場で走ってみるとよいのではないかと思います。走りたいと誰かツテを探して本気で頼み込めば走れる場所はどこかにあるはずではないかと思います。
・自分はこのあと二人目の子供が生まれる予定で、しばらくは難しいですが、状況が許すようになれば、必ず再び本場で走りたいと考えています。
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シケインの後方、辻浦選手)
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MTBのレースに出ていた池本選手:地元紙に日本からの訪問者、と掲載された)

モリタロウ編、以上】