tannenbaum居眠り日記💤

観戦者の目による、おもに自転車(おもにシクロクロス)関連のすみっこネタブログです。

レモングラスと桃源郷(MTB SHOP OTAKE 大竹雅一氏) 

Attack!299の前日、FRIETENチームのメンバー、根本さんに彼の職場近くの秋葉原で拾っていただき、宿泊地の町田入りする前に、根本氏のおしごと、試乗車を返却する、というのにお付き合いしました。
行き先はこちら。
MTB SHOP OTAKE BLOG
知る人ぞ知る、日本にMTBレースが持ち込まれた時代の伝説の人。大竹雅一氏。「シマノXTを開発した」と教わった。日本人で初めてMTB全米選手権(NORBA)で表彰台に登り、全日本MTB選手権初代優勝者。
いまは秦野でショップを開業しておられます。

佐宗さんが乗っている、緑のバイクにOTAKEってロゴがあったような。
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大竹さんのお名前は以前からレジェンド的存在としてお聞きしていたけれど、はじめてお会いしたのは、2015年、佐宗さんの結婚パーティー。
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私はロードバイクを買う前後、オータケ自転車 (FR-700)、という乗り心地のいい自転車をサイクルモード(当時はまだ東京国際自転車展?)で試乗し、本気で買うかどうか悩んだことがあった。
なにやらひと味ちがう商品が揃っている東京サンエスのブースでリーベンデールかっこいいなとか思いつつ、なんだかすごい方が設計したというオータケバイクを借りて試乗レーンでぐるぐる回るひとたちに混ざって試乗したのだった。
ブルー・グレーに塗装されたクラシックな外観だったが(フラットバーと両方つけられると聞いた気がするが試乗車はドロップハンドルだった記憶)、なれない人間にもスルスル操れ、包容力のあるおじさまの様なバイク、余裕ある大人のための、という印象を持った。結局その後Levelのクロモリのロードにしたのだけど。

そして10年後の結婚パーティーでオータケさん当人に遭遇。はじめてお見かけしたご本人は、皆のリスペクトをカサに着ない、少年のようなムードの自然体な方だった。
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そして今回はいよいよ、お店拝見。思えば数奇な巡り合わせである(かなり大げさ)。
到着前にネモさんから、お店の内装すべてが大竹さんの自作であること、お宝がざくざくなこと、そして、熱心に畑をやっていること、というブリーフィングを受ける。
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アメリカのロードムービーにでてきそうな佇まい。
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大きくない看板にかろうじてMTB SHOPとあるが、外観からは何のお店なのか工房なのか、正体はわからない。

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ネモさんに紹介してもらい、2年前に佐宗さんの結婚パーティーでお会いしている、と言ったら覚えてるよ、と軽やかな返事があったけれども、本当かどうか。店内には顧客から預かっているバイクがぎっしり。ファンをがっちりつかんで、自分のペースで納得のいく仕事をしているようだ。
得体のしれない訪問者に対して特に警戒も虚飾もなく、サラっとしている。かつて試乗したオータケ自転車を思い出す。
写真撮る人なの?じゃあ、これ撮ってよ。これ、元は何だかわかる?これも。これも。と、どんどん自慢のリサイクル部品利用の作品披露が始まる。
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自転車やPCのパーツを使った照明器具。アーチスト作の一点ものとしてインテリアショップで売れそう。こういうの、考えるのが好きなんだよねと。
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このフレームも撮ってよ。オリジナルで貴重なのだそう。詳しいことが理解できないが、美しいDE ROSA。
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アメリカンなセンスのオシャレな工具箱。
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これもお宝。ブリジストンのオリジナルで、色が珍しい、また、こんなコンディションのものはないだろうとのこと。愛らしいけれど、博物館レベルなのかも。
そう、いつか博物館やれたらいいなって思うんだよね。もう大竹さんの話のペースにどっぷりつかっている。
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この偉容。歴代すべてのOTAKEフレーム、OTAKEグリーン(竹色)。
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機材音痴にも迫力と魅力が伝わる。TOYOフレームで作っているらしい。
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頑固職人が仕事している風だが、これはHusqvarna(ハスクバーナチェンソーの有名メーカー。私は高級ミシンメーカーのイメージ)のチェーンソーのおもちゃを触っているところ。
職人と少年が混在し世俗を超えたムードだ。他人を押し退ける俺様感もなく、自らの道をピュアに歩んでいるよう。
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こ、これは・・?これはね、道路の向かいに住んでいる芸術家からもらったピノキオで、何かにしようと思ってるんだよ。
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ここにある自転車のしごとを全部片付けたら、これで何を作ろうか、ゆっくり考えようと思ってるんだよ。というあたりで、ネモさんの笑いが止まらなくなった。
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自転車店でよくある赤いスチールキャビネットに混ざって、このグリーンのものがカッコイイ、というと、工場用の重量物を入れても耐えられるハイスペック品で、一般には販売されていないものだ、とのこと。
横にあるアンティークな木製ガラス引き戸のキャビネットの中にぴったりに収まっている木箱たちは廃材で自作。規格がぴっちり揃っている。。高レベルな自作クオリティ。ここまでの写真に写っている床も壁も天井も内装すべて、自作とのこと。
店内に溢れる預り自転車の作業をぜんぶを片付けたら、代官山や中目黒のオシャレ自転車ショップみたいに出来るんだけど。と自負。わたしもそう思います。
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柱には栓抜き。よきアメリカンな香り。日本のMTB黎明期に、米国の空気を吸ってこられたゆえだろうか。
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ここは里山ちかくの住宅地だが、近所には工芸家や芸術家が何人も住んでいて、そういう人達と話をするのが楽しい。また、畑仲間の人生の先輩たちと話するのも勉強になる。と語る。
次にはあれをああいうふうに、と考えているとすぐに一日が過ぎてしまうのだそう。羨ましい。
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この角度で、ぶら下がってる自転車と、窓の外の薪と、向こうの木にかかっている自転車を入れて撮ってよ。いい眺めでしょう。とリクエストがあったが、レンズの画角がいまひとつ合わない。

ネモさんが、自分が預けているバイクの作業状況はどんなものか、とおもむろに話を振ると、いやあ、見ての通りこんなにたくさん預かっててね。もうちょっと待って。
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ガーデニング雑誌のグラビアが撮れそうな裏庭。
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ぶどうや、ラズベリーが実っている。なってますね、というと、ぜんぶ試食させてもらえた。そういうつもりではなかったんだけど。
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わがままを言って、畑を見せて頂いた。乾燥ぎみで日当たりの良い、まさにハーブ向けの畑。
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私、自転車部品の名前より、ハーブ歴20年ですので、こちらは得意。こんなにレモングラスの大株たくさんどうするのか、とビックリしていたら知り合いのレストランに頼まれて分けているのだそう。
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このラベンダーの花の乾燥ぎみな様子、きっと濃厚な香りがするに違いない。
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ビストロ勤務経験のあるネモさんが、農家に買い付けにきた熟練シェフのような仕草で味見したバジルやルッコラ。うまい!と驚きの声。私も味見したが、味が濃いのだ。
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今流行の長細いプチトマトももいでもらってすぐ口に入れたけれども、鮮やかな味。丸い葉っぱのスペアミントの群生があまりに元気そうなので、挿し芽にしたいといって、枝先をもらった。
自家採種して繰り返し自分の畑に蒔いているとその土地に順応してどんどん元気で美味しいものができるようになる、という話を大竹さんはしておられたが、ちょうど最近野菜の種の本でそういう事を読んだばかりだったので自分も是非やってみたいと思った(園芸ブログ化)。しかし、この畑のいちめんに広がる野菜やハーブたちの、幸せそうな様子。大竹さんの手間の掛け方がちょうどいい塩梅なのかな。
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畑に降りる斜面には自作のウッドチップが敷き詰めてあり、足元がドロドロになるのを防いでいる。そういえば、写真がなかったので言及していないが、店内には薪ストーブがある。佐宗さんの薪ストーブとは大きさも素材も違うのだ、という説明。
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この日ネモさんが返却していた試乗車はこれ。ご興味のある方は東京サンエスまで。
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思いがけず、自転車屋さん訪問とは思えないような体験をさせていただきました。どうもありがとうございました。

すごいレジェンドと散々聞いて伺ってかいま見た、名の知られた侍の悠然とした佇まい。それは、私がリアルタイムで見ることの無かった時代に彼の通ったすさまじい道のりあっての現在なのかもしれません。
振り返って、何事も特に成し遂げず終わりそうな自分でも、自分の愛するものごとと、しっかり向き合って、悔いのないようにしたいな。。とインスパイアされたひと時になりました。
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(店の前に積まれたのは、乾燥したレモングラス